南半球五万哩(井上円了 1912年)は当時の世界状況を知るにあたりとても貴重な記録。特に南米への日本人移民の様子が生々しく伝わってきます。その頃から日本人移民を歓迎する国はブラジルと、それからペルーだったそうな。
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—–以下本書より抜粋—–
【移民の心得】
南米各国中、日本移民をとにかく今日なお歓迎する所は、ブラジル国とペルー国なり。その他の国々は、東洋人の移植をよろこばざる風あり。しかしアルゼンチンやチリのごときは、あえて排斥するにあらず。多少の教育ありてここに入るものは、相当の職に就くことを得るなり。もし、わが国民にしてかの地に入らんとするものあらば、第一に身体の健康、第二に言語の熟達、第三に意志の強固の三要件を備うる必要あり。南米の国語は、ブラジル国はポルトガル語、その他はみなスペイン語なり。英語はかの国々には通ぜず、ただ上等社会はフランス語を解し得るをもって、語学としてはスペイン語、ポルトガル語を知らざるものは、フランス語を修習してかの地に渡るをよしとす。たとい南米は富源地に満つというも、手を懐にして金もうけのできるはずなく、多少の艱難辛苦を忍ぶの覚悟あるを要す。しかしてその覚悟を断行するには、必ず強固なる意志を有せざるべからず。従来、かの地に渡りていくぶんの成功を見たるものは、みな意志の強固なりし人なり。ゆえに、余は健康、言語、意志をもって、南米行の三大要件となす。