2017年9月5日の夜から翌日6日早朝にかけ、私たちが暮らしているカリブ海セント・マーチン島に超巨大ハリケーン、イルマ(IRMA)が直撃しました。
当時、私は島内の自宅にいて、あと一歩で命を落とすところでした。氾濫した海水が鉄のシャッター、窓ガラス、壁を一気に破り、激しい波と共に襲いかかって来たのです。
私は何かを考える猶予もなく部屋の中を泳いでいました。
泳ぎながら外を見ると、夜明け前の薄暗い闇の中に時速370キロを超えるハリケーンの姿が現れ、
「このまま外へ流されたらもう最後、それだけではなく、自分の遺体は発見されないだろう」
と直感しました。
そのうえ、部屋の中の水位はすでに2メートル程まで上昇し、天井まであとほんの数十センチです。息のできる空間はもうほとんど残っていません。

「死ぬ」

そう思いました。

─(中略)─

奇しくも自分が超巨大ハリケーンの被災者となり九死に一生を得た時、私はどうしても実際に何が起きたかを書き残し伝えなければならないと思いました。
これらの話を知っていただく事で未来の被災者を一人でも減らせるかもしれないからです。
私はそう願い、本書を書きました。

(以上、はじめにより抜粋)

目次:
はじめに

第1章 ハリケーンイルマとは何だったのか?
突然終わった日常
カリブ諸島はハリケーンの通り道
わずか2週間の間に巨大ハリケーンが3つも襲来
本当の死亡者数は
両国の対応の違い
モラルの崩壊、普通の人も泥棒になる
隣人の大切さ
被害を受けたのは人間だけではない
破壊と再生

第2章 深刻な話の数々
レベル1(話1~話44)
レベル2(話45~話56)
レベル3(話57~話74)
ハリケーン被害からの教訓

第3章 リアルタイムに書き残した記録
もうすぐ生まれる子供のために 2017年9月2日(土)
妻の病名は子癇前症(しかんぜんしょう) 2017年9月3日(日)
出産のために島を脱出する予定が…… 2017年9月4日(月)
もう飛行機は飛べない 2017年9月5日(火)
私は生きている方がおかしい 2017年9月6日(水)
ヒッチハイクで病院へたどり着いた 2017年9月7日(木)
大惨事の中の幸せ 2017年9月8日(金)
非常事態の中にある日常 2017年9月9日(土)
パスポートなしで脱出できるのか? 2017年9月10日(日)

第4章 一転して、ありえない強運の連続
最も重要な問題が進まない(出生証明書の発行とパスポート再取得)
3週間後に見つかったパスポートと貴重品
娘が猫デザインのベビー服に着替えた数分後、愛猫が保護される
一家全滅の可能性も高かった
赤ちゃん連れの住所不定生活が終わる
わが家のビフォー&アフター

おわりに
著者
奥付

「超巨大ハリケーン直撃の島で知ってしまった事」──九死に一生を得た実話(Amazon Kindle版)
Shinobu Uchino(著)